
「人手不足で配送が回らない」と悩んでいませんか。
物流業界の人手不足は、2024年の労働時間規制と労働人口の減少が重なって深刻化しています。しかし、採用強化と業務効率化を企業規模ごとに組み合わせることで、対応の道筋は見えてきます。
本記事では、人手不足の現状データから、原因、企業規模別の対策、実在の解決事例、補助金の活用まで順番に解説します。
物流業界が直面する現状

EC市場の成長に対して労働供給が減少し、物流業界は需要と供給のギャップに直面しています。経済産業省の調査では、2021年の消費者向けEC(物販系分野)市場規模は約13兆円、全分野の合計では約20.7兆円に達し、拡大が続いています。国土交通省の統計でも、宅配便取扱個数は年間約50億個規模で高止まりしています。
一方、物流業界のドライバー確保は厳しい状況です。トラックドライバーを含む「自動車運転の職業」の有効求人倍率は約2.68倍(2023年6月時点)で、全職業平均の約1.2倍を大きく上回っています。求職者1人に対して複数の求人がある、人手不足の状態が続いています。
需要増加を担う人材が不足するなか、2024年4月からは働き方改革関連法により、ドライバー1人あたりの年間の時間外労働が960時間に制限されました。この規制で、ドライバー1人の労働時間が減れば走行距離は短くなり、1日あたりの配達量も減少します。長距離輸送は特に影響が大きく、企業の売上減少やドライバーの収入低下につながる可能性があります。
配送需要は増える一方で供給能力は低下するという板挟みが「物流2024年問題」として、コスト増加とサービス品質低下をもたらす業界全体の課題になっています。(EC市場・宅配便の数値は年度・区分により幅があります。)
出典:経済産業省 電子商取引に関する市場調査ほか。
物流業界における人手不足の最新データ

物流業界の人手不足は、ドライバーの有効求人倍率が全職業平均の2倍以上という水準にあり、採用と経営の両面に影響が広がっています。
本章では、求人倍率の動向と、人手不足を背景とした倒産の状況という2つの観点から、業界の実態を数字で示します。
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有効求人倍率と離職率の推移
厚生労働省 一般職業紹介状況の発表によると、トラックドライバーを含む「自動車運転の職業」の有効求人倍率は約2.68倍で、全職業平均の約1.2倍と比べて2倍以上の水準です。採用1人に対して求人が複数存在する状態を意味し、企業が必要な人材を確保しにくい競争環境が続いています。背景には、求人数の増加以上に、求職者数そのものが長期的に減少していることがあります。少ない求職者を多くの企業が奪い合う構図です。
。数値は集計時点により変動します。
採用の難しさに加えて、定着の面でも課題があります。採用活動の強化だけでは人手不足を根本的に解決できず、労働環境や処遇の改善、定着支援を組み合わせることが不可欠です。勤務体制の柔軟化、給与水準の引き上げ、福利厚生の充実などを同時に進めなければ、採用と離職のサイクルが加速するリスクがあります。
人手不足倒産と経営への影響
人手不足やコスト上昇を背景に、道路貨物運送業の倒産は高い水準で推移しています。東京商工リサーチによると、2023年(暦年)の道路貨物運送業の倒産は過去10年で最多の328件(前年比32.2%増)となり、2024年度(4月〜翌3月)は353件と14年ぶりに350件を超えました。
ドライバーや倉庫作業員の確保が難しくなると、配送遅延が生じやすくなり、顧客の信頼低下につながるケースもあります。
人手不足が経営を圧迫するメカニズムは明確です。配送能力が低下すると納期の遵守が難しくなり、既存顧客の信頼を損ないかねません。特に中小の運送企業では、失った顧客を取り戻す営業コストが増える一方、売上回復には時間がかかるため、利益の圧迫が深刻になりやすい傾向があります。
配送遅延による顧客離れは一時的な売上減にとどまらず、長期的な企業評価の低下につながります。運送・物流企業では納期遵守が競争力の要であるため、一度信用が損なわれると回復は簡単ではありません。人手不足対策を講じないまま経営を続ければ、競争力の低下と利益縮小の悪循環に陥るリスクがあります。
物流業界における人手不足の5大原因

物流業界の人手不足は、5つの主要因によって引き起こされています。ドライバーの高齢化、倉庫スタッフの確保難、アナログ業務による非効率、長時間労働と低賃金、力仕事の負担です。これらが採用難と離職を加速させ、現場運営に影響を及ぼしています。
本章では、各要因がもたらす具体的な影響を見ていきます。
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1. ドライバー年齢構成の高齢化
トラックドライバーの年齢構成は全産業平均より高齢化が進んでおり、40〜54歳が44.3%を占める一方、29歳以下の若年層の割合は全産業平均を下回っています。中高年層への依存度が高く、若手が入りにくい構造で、採用と人材育成の両面で課題を生んでいます。
若年層がトラック運転手を避ける背景には、業界全体の労働時間の長さがあります。他産業より拘束時間が長い傾向があるなか、仕事と生活のバランスを重視する世代にとって、ドライバー職は魅力的な就業先になりにくいのが実情です。
若い世代がトラックの運転に必要な中型・大型免許の取得を負担に感じ、就業をためらう面もあり、賃金水準の改善だけでは解決しない、働き方の根本的な見直しが求められています。
この高齢化と少子化の進行により、ドライバーの不足数は2020年度の約4万人から、2025年度には14万人超、2030年度には21万人超に拡大すると予測されています。※1対策を講じない企業は、数年以内に深刻な人員確保の危機に直面する可能性があります。採用強化と業務効率化を同時に進める戦略の構築が、今後の経営継続に不可欠です。
※1. 不足数はNX総合研究所などの試算にもとづく予測値です。
2. 倉庫内作業スタッフの確保が困難
倉庫内作業スタッフの確保は、ドライバー不足と同等かそれ以上に深刻な課題です。都市部やベッドタウンの倉庫でも、周辺に競合する物流施設が集中しているため人材獲得競争が激しく、従来の賃金・採用条件では応募が集まりにくくなっています。募集単価も上昇傾向にあります。
特に採用が難しいのは、倉庫作業の経験者やフォークリフト運転技能者、長時間の立ち作業に対応できる人材です。これらの人材は業界内でも需要が高く、多くの企業が同時に求人を出しています。募集だけでは必要な人数を確保しにくく、採用から定着までを見据えた継続的な人材戦略が重要になっています。
3. アナログ業務による生産性低下
倉庫や輸送の現場に手書き指示書やFAXといったアナログ業務が残ると、若年層の離職を招き、人手不足と生産性低下の悪循環に陥りやすくなります。デジタルツールに慣れた若い世代にとって、紙ベースの指示や確認は効率が悪く、ストレスがたまりやすい環境です。
実際の現場では、朝礼で配られる手書きの作業指示や、FAXで届く配送依頼を手作業で入力し直すといった作業が日常化しているケースがあります。こうした非効率な流れは、ドライバーや倉庫作業者の時間を奪い、本来の業務に集中する余裕を減らします。デジタル化が進む他業界と比べて労働環境の質が低く見えてしまうため、採用段階での辞退にもつながりやすくなります。
生産性が低いままでは新しく入社した人材も定着しにくく、さらに人員不足が進む負のスパイラルが生まれます。残された少ない人数でより多くの仕事をこなすことになり、1人あたりの負担が増大し、労働条件の悪化につながります。
4. 労働時間の長さと低い給与水準
トラックドライバーは労働時間が長い一方、年間所得は全産業平均より低い傾向があり、大型で約5%、中小型で約12%低い水準とされています。このギャップにより、求職者にとってドライバーは魅力的な選択肢になりにくく、採用難が深刻化しています。年間労働時間も全産業平均より長く、長時間労働と低めの賃金という印象が定着しています。
この背景には、物流業界の多重下請け構造があります。利幅が限定的で、その利益がドライバーの給与に十分還元されにくい仕組みが残っています。さらに大きな問題が荷待ち時間です。積み下ろしや検品で費やす荷待ち時間は給与に反映されにくく、実労働時間に対する時給換算では報酬が低くなりがちです。例えば、月200時間の拘束時間のうち相当の時間が荷待ちであれば、実質的な時給はさらに下がります。
長時間労働で低めの給与という環境は、ドライバーの他業種への転職を促し、新規求職者がこの職を選ぶ動機を弱めています。この問題への対応として、改善基準告示や2024年問題を契機に、待遇改善と業務効率化の両立が求められています。荷待ち時間の削減を最優先に、続いて給与体系の見直しに取り組むことが、人手不足の解消につながる環境整備の第一歩です。
5. 力仕事の負担が大きく労働層が限定される
荷物の積み下ろしやピッキングといった力仕事が多いため、体力面の要件が厳しく、採用できる人材層が限定されています。倉庫内での運搬や積み込みは一定の筋力と持続的な体力を必要とするため、体力に自信がない人は応募をためらう傾向があります。
現場の実情として、ドライバー職における女性の割合は全職種平均と比べて大幅に低い水準です。公益社団法人全日本トラック協会なども、女性や高齢者が働きやすい職場環境の構築を課題として挙げており、体力要件が人材確保を妨げている点は業界全体で認識されています。採用の門戸を広げるには、力仕事に頼らない業務設計や機械化が必要です。
パレットジャッキやハンドリフトなどの補助機器の導入、自動仕分け機による負担軽減により、体力に自信のない人でも働ける環境を整える企業が増えています。人手不足が深刻化するなか、労働条件の改善が採用対象者の拡大につながると考えられます。
物流業界の人手不足を解決する施策

人手不足を解決するには、ドライバー確保と並行して、配送効率と倉庫オペレーションの最適化に取り組む必要があります。配送部門では輸送モードの転換や共同配送による運行効率化、倉庫部門では自動化による労働力の補完が有効です。
本章では、配送と倉庫それぞれの課題に対応する3つの施策を紹介します。
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1. 配送ルートの一部を鉄道・船舶に転換するモーダルシフト
モーダルシフトとは、配送ルートの一部区間をトラックから鉄道や船舶に切り替える施策です。長距離輸送をドライバーが担わなくなるため、特に広域配送を抱える企業でドライバー不足の緩和につながります。
この施策が有効に機能するのは、ドライバーの業務負荷を減らしながら輸送能力を維持できるためです。例えば、集荷から貨物ターミナルまではドライバーが担当し、そこから鉄道貨物や船舶に積み替えて遠方へ送り、到着後は現地のドライバーが配送を完結させる形です。
実際に、和歌山県の事例では、和歌山港から神戸・大阪港への輸送をトラックから船舶に切り替え、ドライバーは港までの短距離輸送を担当することで、拘束時間の短縮と輸送コスト・CO2排出量の削減を実現しています(国土交通省・厚生労働省・全日本トラック協会が取り組みを公表)。長距離を走り続けるドライバーの数を減らせるため、採用競争が激しい長距離ドライバーの確保圧力も下がります。
同時に、トラックと比べて鉄道・船舶は輸送単位あたりの環境負荷が小さいため、CO2削減目標の達成にも寄与します。ただし、鉄道や船舶は運行スケジュールが固定されているため、天候悪化時や急な需要増への対応が難しく、ターミナル施設が限られる地域では対象ルートが限定される制約もあります。
中小企業では初期の契約手続きや調整の負担が大きくなる場合があるため、効果の出やすい幹線ルートから段階的に検討するのが現実的です。※1
※2. 出典:厚生労働省・国土交通省・全日本トラック協会「短距離輸送におけるモーダルシフトによる運転者の拘束時間削減(和歌山県)」)
2. 共同配送による積載率向上とドライバー削減
複数企業が同じトラックで荷物を運ぶ共同配送により、積載率を高め、必要なトラック台数とドライバー数を抑えられます。同じエリアに納品する複数メーカーの商品を1台に積み合わせれば、空きスペースを有効活用でき、運行回数を減らせます。積載率が向上すれば、同じ配送量でも必要なトラック台数を削減できます。
この仕組みがドライバー不足対策として機能するのは、少ないドライバーで既存の配送量をまかなえるようになるためです。実際に、カゴメは食品メーカー数社と共同配送網を構築し、積載率と配送効率の向上に取り組んでいることを、国の「ホワイト物流」推進運動のなかで公表しています。
人材採用が難しい状況下では、既存リソースの効率化によって人手不足の影響を緩和する現実的な手段になります。積載率が上がれば燃料費やメンテナンスコストも下がり、経営効率の改善にも直結します。
ただし実現には、複数企業間での配送スケジュール調整、データやシステムの統一、信頼できるパートナー企業の確保が欠かせません。導入には数ヶ月以上の時間と調整コストが生じ、企業文化や配送ポリシーが異なる企業同士の協力では意思疎通の負担も大きくなります。そのため、中長期的な取り組みとして位置づけるのが現実的です。※3
※3. 出典:国土交通省「ホワイト物流」推進運動 賛同企業の自主行動宣言)
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3. 倉庫内作業の自動化を進める
既存倉庫にピッキングや搬送の自動化を段階的に導入することで、スタッフの身体負担を軽減しながら、倉庫の人手不足に対応できます。自動倉庫を一から構築するには多額の初期投資が必要ですが、現在の施設を活かして必要な機能だけを自動化する方法なら、導入コストと期間を抑えられます。
ピッキングは倉庫業務のなかでも特に労働負荷が高く、この業務をロボットや無人搬送車(AGV/AMR)で置き換えることで、スタッフは付加価値の高い作業へシフトできます。
実際に、ニトリは物流センターにロボットストレージシステム「AutoStore」を導入し、約1万2千種類の小物商品の保管・入出庫を自動化しています。ロボットが棚をピッキングステーションへ搬送し、作業者は待機した場所で商品を取り出して梱包する仕組みで、庫内作業の負担軽減と省人化を進めています。既存設備とこうした自動化機器を組み合わせれば、運用を継続しながら効率化を実現しやすくなります。
このような部分的な自動化は導入後の効果測定が明確になりやすく、次の投資判断もしやすくなります。スタッフの確保が難しい現状では、採用活動と並行して作業効率を高める施策を進めることが重要です。まずは部分的な自動化から検討し、効果を測定しながら段階的に広げることで、倉庫運営の持続性を確保できます。※4
※4. 出典:ニトリの物流自動化に関する公表事例・各種報道
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物流業界の人手不足に対する企業規模別の対策方法

物流業界の人手不足対策は、企業規模によって優先順位が大きく異なります。大手企業は自動化・WMS導入による効率化を、中堅企業は採用強化と部分自動化の組み合わせを、小規模企業は配車最適化・共同配送といった低コスト施策から着手することが現実的です。
本章では、企業規模に応じた対策を順に解説します。
※以下の投資額・効果・人数は一般的な目安で、企業や条件により大きく異なります。
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大手企業向け対策(年商100億円以上)
大手企業の人手不足対策は、自動化投資によるオペレーション変革が現実的な選択肢になります。一定規模の企業であれば、自動倉庫やAGV(無人搬送車)、AMR(自律走行ロボット)の導入が経営判断の対象になります。これらの機械化により配送・庫内作業の効率改善が期待でき、機械化できない配送や顧客対応へ人員をシフトすることで、投資回収を見込みやすくなります。
同時にWMS(倉庫管理システム)の高度化やAI配車システムの導入を組み合わせることで、単なる自動化ではなく労働力の有効活用につながります。機械化できない業務にドライバーの工数をシフトさせることで、採用競争が激しい環境でも既存人材の定着率向上につながるケースが多くあります。このアプローチは、人手不足への対応だけでなく、競争優位性の強化にも機能します。
中堅企業向け対策(年商10~100億円)
中堅企業の人手不足対策は、システム導入とドライバー処遇改善を並行することで、採用と効率化の両立を目指せます。WMS(倉庫管理システム)や配車システムの導入と、ドライバーの年収引き上げを組み合わせるアプローチが考えられます。WMSは倉庫内の荷物管理を効率化してスタッフの作業時間を短縮し、配車システムは最適なルート設定でドライバーの走行距離と拘束時間を削減します。
投資額は小さくありませんが、採用が難しい環境では処遇改善だけで応募者を確保し続けるのは難しいのが実情です。システムで業務負荷を軽減することが既存ドライバーの離職防止にもつながり、中期的な投資回収が見込めます。導入時は補助金の活用やリース、段階的導入も検討の価値があります。
小規模企業向け対策(年商10億円未満)
年商10億円未満の小規模運送企業は、採用と効率化を同時に進める低コスト対策が有効です。限られた予算のなかで人手不足に対応するため、投資規模と効果のバランスを重視する戦略が求められます。
クラウド配車ツールの導入は、比較的低コストで実装でき、ドライバーの業務負荷を軽減します。手作業で配送ルートを組んでいた場合、ツール導入で配車時間が短縮され、事務作業に費やしていた時間をドライバーのサポートに回せるようになります。
結果として既存ドライバーの働き方改善が進み、採用の応募増につながった例もあります。
共同配送への参加も現実的な選択肢です。地域の複数企業と配送ネットワークを共有することで、小規模企業でも効率的な配送体制を構築できます。ドライバーの稼働率が上がり、給与を基準に検討する求職者にとって魅力的な職場になります。
あわせてドライバーの待遇を改善することで、既存ドライバーの定着率の向上につながる傾向があります。採用が難しい状況では待遇改善が新規採用の決め手になるため、優先度は高くなります。
物流業界で人手不足解消に成功した事例

人手不足の解消に取り組む企業は、モーダルシフト・共同配送・倉庫自動化といった施策を、自社の課題に合わせて選択しています。
本章では、世の中で公開されている実在の取り組みを3つ紹介します。いずれも国の運動や公表資料で確認できる事例です。
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大手食品流通企業の成功事例
食品メーカーのカゴメは、同業の食品メーカー数社と共同配送網を構築し、積載率と配送効率の向上に取り組んでいます。この取り組みは、国土交通省などが進める「ホワイト物流」推進運動のなかで、自主行動宣言として公表されています。
各社が個別に配送していた商品を、同じ方面向けにまとめて積み合わせることで、トラックの積載率を高め、運行回数を抑えられます。1社単独では実現しにくい効率化を、企業間の連携によって実現している点が特徴です。
共同配送によってトラックの必要台数を抑えられれば、少ないドライバーで配送量をまかなえるようになり、人手不足の影響の緩和と、CO2排出量の削減を同時に進められます。食品業界のように配送先や納品条件が近い企業同士では、共同配送は有力な選択肢となります。
出典:国土交通省「ホワイト物流」推進運動 賛同企業の自主行動宣言
中堅配送企業の成功事例
和歌山県では、トラック輸送の一部を船舶に切り替えるモーダルシフトにより、ドライバーの拘束時間を短縮した取り組みが公表されています。和歌山港から神戸・大阪港への輸送を船舶に転換し、ドライバーは港までの短距離輸送を担当する形に見直した事例です。
この見直しにより、長距離を走り続けていたドライバーの拘束時間が短縮され、あわせて輸送コストとCO2排出量の削減も実現しています。長距離ドライバーの負担を減らすことは、採用競争が激しい長距離輸送の人材確保圧力を下げることにもつながります。運
行スケジュールの調整やターミナルの立地といった条件はありますが、幹線輸送を抱える事業者にとって、モーダルシフトはドライバー不足への現実的な対応策です。
出典:厚生労働省・国土交通省・全日本トラック協会「短距離輸送におけるモーダルシフトによる運転者の拘束時間削減(和歌山県)
小規模ラストマイル企業の成功事例
倉庫の自動化では、ニトリがロボットストレージシステム「AutoStore」を物流センターに導入し、庫内作業の省人化を進めています。ラストマイル配送そのものではありませんが、出荷を支える倉庫工程の人手不足対策として、公開されている代表的な事例です。
ニトリの倉庫では、ロボットが商品の入った専用コンテナを作業者のいるステーションへ搬送し、作業者はその場で商品を取り出してバーコードを読み取り、梱包します。
小型商品を中心に約1万2千種類の商品の保管・入出庫を自動化し、作業者が倉庫内を歩き回る負担を減らしながら、限られた人員で処理量を確保しています。AIが売れ筋を分析して棚の配置を最適化する機能も備えています。倉庫の人手不足に直面する企業にとって、既存の出荷業務を自動化で支える具体的なモデルになります。
物流業界の人手不足に関するよくある質問(FAQ)

物流業界の人手不足対策は、給与改善・自動化投資・優先順位の判断という3つの実務的な課題に整理できます。
本章では、採用への効果、中小企業の投資の進め方、採用と効率化の優先順位について解説します。
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Q1. 給与改善だけで採用は増えるのか?
給与改善は採用増につながりやすい一方、定着には労働環境の改善を組み合わせる必要があります。給与の引き上げを実施した企業では応募数が増加する例が報告されており、候補者を集める初期段階では給与が有効に機能します。
しかし採用後の課題は別です。ドライバーや倉庫作業員の離職理由は給与だけでなく、長時間労働や休暇の少なさ、職場環境といった要因が大きいためです。給与改善に加えて福利厚生の充実と勤務体制の見直しを同時に進めた企業では、離職率の低下が確認されています。
給与は「入り口の問題」であり、人材を確保し続けるには給与・福利厚生・勤務体制改善の3点セットでの対策が欠かせません。給与だけの改善では、採用コストをかけても人材流出で効果が相殺されるリスクがあります。
Q2. 中小企業が自動化投資で失敗しないコツは?
中小企業の自動化投資は、小規模な施策で成功体験を積んでから段階的に進めることが、失敗を避けるポイントです。最初から大規模な自動化設備やWMSに投資すると、回収に時間がかかり経営の負担になりかねません。
実行しやすい進め方は、配車最適化ツールなど低コストで導入できる施策から着手することです。これらは比較的短期間で効果が出やすく、ドライバーの走行距離短縮や配送時間の削減が数値で見えます。こうした成功体験を組織内で共有すると、次の投資判断がしやすくなります。
あわせて、国や自治体の補助金を活用することで初期投資の負担を軽減できる場合があります。省力化投資やIT導入を支援する制度などを調査し、投資計画に組み込むことで自己資金の負担を減らせます。段階的なアプローチにより、効果を確認しながら次の投資に進めるため、無駄な支出を防ぎやすくなります。
※補助率・上限・要件は制度や年度で変わるため、最新の公募要領で確認してください。
Q3. 人手不足対策の優先順位は採用か効率化か?
採用強化と効率化は段階的に進めるべきで、どちらか一方に絞るものではありません。短期・中期・長期の時間軸に応じて施策を切り替えることで、限られたリソースを最大限に活用できます。
短期(0〜6ヶ月)は、採用強化と給与改善の優先度が高い段階です。新規採用を進めなければ現在の不足は緩和されず、給与や待遇を改善すれば応募率が高まり、採用活動の効率が向上します。この期間は配車システムやWMSの導入準備を進める時期とも位置づけられます。
中期(6〜18ヶ月)は業務効率化への投資が本格化する段階です。配車の最適化や倉庫業務の自動化で既存人員の生産性を高めれば、同じ人数でより多くの仕事をこなせるようになり、採用ペースの緩和にもつながります。
長期(18ヶ月以上)では、中期で得たデータや経験を踏まえて、自動化技術の本格導入を検討します。各段階で適切な施策を積み重ねることで、効果が相乗的に広がり、人手不足の根本的な解決につながります。
物流業界の人手不足への現状と対策まとめ

物流業界の人手不足は、2024年の労働時間規制と労働人口の減少により構造的に深刻化しており、企業規模別に異なる対策を段階的に実装することが重要です。
本記事の要点は次のとおりです。
- 2024年4月の時間外労働の上限規制(年960時間)が、採用難と業務負担の増加を同時に引き起こしている
- ドライバーの有効求人倍率は全職業平均の2倍以上で、40〜54歳が44.3%と高齢化が進む
- ドライバー不足は2030年度に21万人超に拡大すると予測され、採用強化だけでなく効率化・自動化との組み合わせが必要
- 企業規模別(大手・中堅・小規模)に優先順位を変えた対策が有効
- モーダルシフト(和歌山県)・共同配送(カゴメ)・倉庫自動化(ニトリ)など、公開されている実在の取り組みが参考になる
- 補助金を活用すれば初期投資の負担を軽減できる場合がある
採用と効率化のどちらを優先するかは、企業規模と現在の労働環境によって判断すべき課題です。まずは自社の現状を数値で把握し、取り組みやすい対策から段階的に着手することが、人手不足への現実的な備えになります。
※本記事の数値(有効求人倍率・不足人数・年齢構成・倒産件数・投資額・効果など)は、公的統計や各社の公表情報、一般的な目安にもとづくもので、集計時点・区分・条件により異なります。ドライバー不足や輸送力不足の試算は国土交通省「物流を取り巻く動向と物流施策の現状・課題」、求人倍率は厚生労働省 一般職業紹介状況、倒産統計は東京商工リサーチなど、一次情報もあわせてご確認ください。